社会人や主婦でも薬剤師になれる?薬学部が難しい理由や流れ・注意点について解説
- 公開日
カテゴリ:基礎知識
本記事では社会人や未経験が薬学部に合格できるのか、また合格するために必要なことや流れについて詳しく解説しています。
記事内では薬学部の大学の選び方や注意点についても詳しく解説しているため、薬剤師になりたい方や薬学部を目指している方は是非参考にしてください。
目次
社会人からでも薬剤師になることは可能?
薬剤師は雇用が安定していて人気のある職業です。
そのため、社会人や主婦の方のなかには、薬剤師になりたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、社会人からでも薬剤師になることは可能なのか、詳しく解説します。
結論:難易度は高いが不可能ではない
結論から申し上げますと、社会人から薬剤師になる難易度は高いですが、不可能ではありません。
薬剤師になるには、6年制の薬学部に入学し国家試験に合格する必要があります。
また、薬学部の学費は、350万円〜1,200万円ほどするため、時間とお金の確保が必要です。
薬学部受験は一般的に難易度が高いとされており、特に学費を抑えられる国公立大学薬学部は、競争率も求められる得点も高く狭き門です。
社会人の方でも、受験を突破し6年間の薬学課程を修了し、薬剤師の国家試験に合格すれば薬剤師になることは可能ですが、お金と時間に余裕がないと厳しいかもしれません。
薬剤師になるために必要なこと・流れ
ここでは、薬剤師になるために必要なことや流れについて説明します。
薬科・薬学部の大学に入学し、卒業する
まず、薬剤師になるには薬科大学か、薬学部に入学し、薬学課程を修了する必要があります。
私立大学では国公立大学と比較すると、試験の難易度は下がりますが学費が高くなります。
一方で、国公立大学は、学費は比較的抑えられますが受験難易度は高いでしょう。
薬学課程は6年間の為、4年制の大学で薬剤師免許を取ることはできません。
また、夜間や通信教育はなく、全日制のみとなっています。
薬学課程では、4年次に薬学共用試験、5年次に実務実習、6年次に卒業論文の制作と卒業試験があります。
これらの課程を順調にクリアすると6年間で修了できますが、なかなか厳しいものとなっており、場合によっては留年する可能性もあります。
薬剤師国家試験を受ける
次に薬剤師国家試験です。
薬剤師の国家試験は誰でも受験できるものではなく、6年生薬学課程を修了した者に限定されます。
薬剤師国家試験は年に1回実施されます。
試験は345問からなるマークシート式で、2日間の午前午後の4回に分けて実施されます。
領域ごとの足切り点と、全体の得点率が定められており、合否はその合格基準を満たすかどうかによって決まります。
実施される時期は、3月初旬で、北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、徳島県、福岡県の全9地区が試験地となっています。
試験問題は厚生労働省の薬剤師国家試験ページで情報が公開されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師国家試験に合格する
薬剤師になるためには、卒業するだけではなく薬剤師国家試験に合格することが必要となります。
2024年度の薬剤師国家試験の合格率は、全体68.43%、新卒84.36%、既卒42.42%、その他43.87%でした。
近年、全体の合格率はおよそ70%、新卒がおよそ85%で推移しています。
合格点は年度ごとの難易度にもよりますが、およそ210点~230点(345点換算)と言えるでしょう。
数字だけ見るととても難しいとは言い難いですが、薬剤師国家試験に合格するためには、大学合格前もそうですが、在学中の6年間は必要な科目の履修を行いテストに合格しなければならないため勉強を怠るわけにはいきません。
中には留年する人もいるため、卒業も簡単ではありません。
在学中どれだけ勉強に励んでいたかにより、合格できるかが決まってくるといえるでしょう。
就職活動をして薬剤師としてデビュー
薬剤師国家試験に合格すれば薬剤師として仕事を始めることができます。
身近な所では、調剤薬局や病院薬局、ドラッグストアなどが挙げられます。
その他にも、製薬会社のMR、治験コーディネーター、臨床開発モニター、化粧品メーカーなど活躍できる職場は様々です。
選択肢が多いため、自分に合った職場探しが非常に重要です。
自己分析を行い強みや弱みを把握したうえで、事前に情報収集を行いましょう。
社会人になってから薬剤師になるのが難しいと言われる理由
続いて、社会人が薬剤師になるのは難しいと言われる3つの理由を解説します。
お金と時間を確保する必要があるから
薬学部を卒業するには、国公立大学でおよそ350~450万円、私立大学でおよそ1,000~1,200万円の学費がかかります。
在学中は正社員として働くのは難しいため、安定した収入は得られなくなります。
また、奨学金を借りた場合でも、6年間の学費と生活費全てまかなうのは非常に難しいです。
アルバイトをしながら学校に通うことは可能ですが、テスト前など勉強時間を確保しなければならないため融通の利く職場であることが必須条件となります。
ある程度まとまった資金が必要となります。
入学できても薬学課程を卒業するのが難しいから
国家資格取得が必要となるため、ほかの学部よりも勉強量が多く簡単に修了できるものではありません。
それに加えて、4年次以降は薬学共用試験や卒論など、学業に専念する環境が必要不可欠です。
試験前には1日3~5時間程度の勉強時間の確保をしなければならないため、勉強と生活・家事の両立が非常に難しく、続けられないケースも少なくありません。
卒業し、薬剤師国家試験に受かるまで6年以上掛かる可能性が高いから
大学入学から最短6年で薬剤師になれますが、それよりも長い年月かかるケースも少なくないです。
まずは薬学部への合格です。
難易度が高い入試となるため1年で合格できるとは限りません。
東京薬科大学は一般入試を複数回実施していてその中でも倍率が低い試験で1.5倍以上の倍率です。
入試の難易度によっては合格までに2年以上かかるケースもあります。
さらに、薬学部はレベルの高い試験を突破しなければ、進級ができないため留年率が高いです。
そのため、無事に合格し卒業出来たとしても、年齢が高いことを理由に就職できない可能性もあります。
大学選びの際に気をつけるべきこと
続いて、大学選びの際に気を付けるべきことを2点説明します。
6年間通い続けられるエリアにあるか
1つ目は、6年間通い居続けられるエリアにあるかということです。
通学時間が片道1時間を越えると往復に2時間かかり、かなりしんどくなってくると思います。
他には、乗り換え回数も視野に入れて考えるべきです。
乗り換えが多いとこれもまた、大変です。
そのため、片道1時間以内のエリアに抑えることが重要です。
金銭的に通い続けられるか
大学までの距離が遠くなると、交通費にお金がかかってしまいます。
中には、学年でキャンパスが変わり大移動となる大学も存在しています。
キャンパスの移動や交通費も考えるべきでしょう。
また、どうしてもいきたい大学があるのならば引っ越しを検討することになると思います。
可能性があるならば、引っ越しに関わる費用についても考えながら行動する必要があります。
薬剤師に近しい他の職種も検討してみる
次に、薬剤師に近い他の職種について説明します。
登録販売者
ドラッグストアや薬局では、薬剤師不足によってお客様に十分な情報を届けられないために2006年に薬事法改正によって誕生したのが登録販売者です。
登録販売者の仕事と言えば、お客様に適切な薬をアドバイスしたり、薬の成分や効能をわかりやすく説明したり、副作用など注意すべき情報を伝えたりする役割があります。
登録販売者の資格を取得するためには、年一回エリアごとに実施されている「登録販売者試験」を受けて合格する必要があります。
この試験は受験のための条件がないため、どなたでも受験が可能です。
試験合格後は、販売従事登録を発行してもらうための申請が必要です。
さらに登録販売者として正式に働くには、2年以上の実務経験を積む必要がありますが、試験を受験する前に過去5年以内に一般従事者としての実務経験がすでに累計2年以上ある場合は、試験合格後すぐに売場に立つことが可能です。
実務経験がない場合は、登録販売者として働き始めて2年が経つまでは、研修中となります。
実務経験を積んで正式な登録販売者となると、店舗管理者として働ける可能性もあります。
最近では、コンビニでも医薬品を販売するためやビューティーアドバイザーになるためなど様々な業種に、登録販売者は求められています。
登録販売者は、薬剤師と違って調剤して販売することが出来ませんが、近い仕事と言えます。
調剤薬局事務
続いては、調剤薬局事務です。
調剤薬局事務は、保険薬局での受付や会計などが主な仕事となります。
調剤薬局事務の民間資格は多くありますが、実際は資格より経験の方が優遇されます。
医療事務よりは、難易度が低いため独学で学ばれる方も多いです。
不足している薬剤師の業務を助ける調剤薬局事務は、薬局にとってかかせない存在です。
患者さんとコミュニケーションを取る調剤薬局事務は、薬局の顔として活躍が期待されます。
この職業は、直接医薬品に触れることが出来ませんが、薬剤師に近い仕事です。
看護師/准看護師
最後に看護師です。
看護師の仕事と言えば、医師の診療や治療のサポートを行い、けがや病気などで不自由な暮らしを送る患者さんや入院している患者さんのお世話をします。
また、患者さんとコミュニケーションを円滑にとり、患者さん本人だけでなく患者さんの家族からの相談や生活指導などといったメンタルサポートも行います。
看護師になるには、大学、専門学校、看護大学校など多くの道から看護師になることができます。
看護師の人手不足が騒がれる現在で、必要とされる存在に慣れること間違いありません。
薬剤師と違って、調剤し処方することはありませんが、患者さんがお薬を飲むために手助けをしたり、注射を打ったり、副作用が出ていないか観察したりします。
薬剤師とはまた違ったやりがいがありそうです。
諦めたくない方へ|薬剤師になるためにやるべきこと
最後に薬剤師になるためにやるべきことについてお伝えします。
自分の今の学力を理解する
1つめは自分の今の学力を理解することです。
自分の学力がどれほどか分かっていないといくら勉強しても遠回りになってしまいます。
自分は基礎が出来ていると思っても実は出来ていなかったりすることがよくあります。
この公式は何故使うのか。
この文法を使う理由、単語の意味など細かなところこそ大切です。
自分はそれが出来ているのかきちんと見極めましょう。
そのために、模試を受け偏差値から自分の学力を理解することが重要です。
模試を受けて自分の偏差値が分かっていながらも自分の学力を過信してしまう瞬間が誰しもあると思います。
そのため、第三者から自分の学力について教えてもらうこともまた、重要です。
時間と費用的に現実的か確認する
2つ目は、時間と費用的に現実的か確認することです。
受験をするだけで、塾・予備校代、テキスト代や合格した際には入学金や準備金にかなり費用がかかります。
遠方に合格が決まってしまうと引っ越し費用もかかってきます。
学費も6年間となるため、他学部に比べて費用がかかります。
また、薬学部は難易度、倍率が共に高いので長時間の勉強が必要です。
受験は、現役の高校生、浪人生との戦いとなるので、社会人はどうしても勉強時間に差が生まれやすいです。
どうしても薬学部に合格して薬剤師になりたいのならば、勉強時間を生み出すために休職や仕事量を減らしても大丈夫なのか現実的に考える必要があります。
家族や塾の先生に相談する
薬剤師を目指すには、高額な費用と最短でも6年間という時間を確保しなければなりません。
そのため、自分一人の力ではまかなうことは非常に難しいため、家族の理解・協力が必要となってきます。
具体的には、「家事や子育てのサポート」「学費や生活費の支援」「勉強に集中できる環境整備」など、生活面・金銭面・環境面で家族のサポートが必要となるでしょう。
薬剤師になるためには場合によって6年以上かかる場合もあることを念頭に置きましょう。
薬学部合格のために自主学習はもちろん、塾へ通っている人・検討している人もいるでしょう。
塾に通うことで、講師に勉強を教えてもらうことはもちろんですが、自分の学力を知るきっかけにもなるでしょう。
自分の目指している大学はもちろん、今の学力で合格を狙いやすい大学などを講師と話し合ってみましょう。
社会人になってから薬剤師を目指すということは、自分の努力ももちろん大切ですが、家族からの理解も重要です。
まずは家族とよく話し合ってみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
社会人になってからでも薬剤師になることは可能ですが、その道のりはとても険しいものだと思っておきましょう。
薬剤師の資格を取得するには最短でも6年間、そして多額の費用が発生します。
そして勉強から離れている状態であれば、若い時と比べて新しい知識が入りにくく理解するのにも時間がかかってしまいます。
本気で薬剤師を目指すのであれば生活面・金銭面・環境面・学力そしてご自身の体力など今一度熟慮してみましょう。