【平行線公理】とは?数学者達を悩ませてきた証明問題について解説

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カテゴリ:勉強・対策

中学の数学で図形の性質や証明について学習します。
証明を行うのは中学の数学からで、ここから数学の世界である「幾何学」の入り口を学ぶことになります。
「図形の性質や直線との関係を証明する」という数学の解き方は古代ギリシャやエジプトなど古くからあるものです。
この数学の知識を駆使しピラミッドや、美しい建築物が建設されているのです。
ここでは数学の証明問題の「平行線」について解説していきます。
正しいと思っていた公準に矛盾が生まれ、異論が生じ、長きに渡って解明されなかったテーマです。
読んで、平行線の知見を広げてください。

平行線公理の問題とは


平行線公理の問題とは、ユークリッド幾何学(※)における平行線の性質に関する問題です。
ユークリッド幾何学では、平行線公理として以下のように、ある直線上の点から引いた直線とその直線上の点との関係を定義しています。

「直線上の点Pから引いたある直線L1に対して、Pを通りもう一つの直線L2が引ける。
そして、L1とL2がL1上のある点Qで交わらない場合、L1とL2はどこまでも延長しても交わらない。」

ところが、平行線公理には問題があります。
非ユークリッド幾何学と呼ばれる他の幾何学体系では、平行線公理が成り立たないことが示されています。
非ユークリッド幾何学の説明では、平行線は互いに交わることがあります。
この問題は、19世紀の数学者によって提起され、ユークリッド幾何学の平行線公理についての矛盾と限定性が指摘されました。
その後、非ユークリッド幾何学が発展し、相対性理論などの現代物理学において、非ユークリッド幾何学が重要な役割を果たしています。
まとめると、平行線公理の問題とは、ユークリッド幾何学における平行線の性質が他の幾何学と異なること、平行線公理が独自の仮定であることによる制約や矛盾を指します。
※ユークリッド幾何学:古代ギリシャの数学者である、ユークリッドによって確立された幾何学の一形態で、図形的直観を基本に進められた理論を5公準としてまとめています。

第1公準:任意の2つの異なる点を結ぶ直線が必ず存在し、それは一意である(直線の一意性)
第2公準:任意の直線線分を選び、その上で延長することができ、無限遠点まで延長できる(範囲の無限性)
第3公準:任意の中心と半径を持つ円を描くことができ、円は中心を持つ(円の中心と半径)
第4公準:任意の2つの異なる点間には唯一の直線が引け、任意の2つの異なる円の交点は最大で2つである(同一性)
第5公準:任意の直線に対して、その直線と直交する直線が一意に存在する(平行線)

平行線の同角のやってはいけない証明


平行線の同角に関する証明で、やってはいけない方法があります。

誤り1: 傾きを比較する方法

平行線の特徴は、それらの傾きが等しいことです。
しかし、同じ傾きを持つ線が必ずしも平行であるわけではありません。
例えば、直線y = 2xとy = 2x + 1は同じ傾きを持ちますが、平行ではありません。
正確には、傾き=平行と考えることはできないのです。

誤り2: 同じ角度を持つという主張

平行線の間には、同じ角度を持つ直線が存在しないという事実があります。
もし同じ角度を持つ直線が存在すると仮定すると、その直線は平行線と重なるはずです。
しかし、平行線は互いに交差しないため、同じ角度を持つ直線は存在しません。
正しい平行線の同角の証明方法は、以下のいずれかの方法を用いることです。

正しい証明方法1: 平行線の定義に基づく証明

平行線の定義によれば、平行な直線は同一の平面上であり、互いに交差しないことです。
この定義に基づいて証明を行うことです。
平行線の集合を仮定し、交差することを前提とした仮定を挙げます。
仮定に矛盾が生じることを導き、平行線の集合が交差するという仮定が間違っていることが示されます。
結論として、正しい平行線の同角が証明できます。

正しい証明方法2: 平行線の性質を利用する証明

平行線の性質を利用して証明を行う方法です。
平行線の集合を仮定します。
平行線の性質を利用して、直線同士の角度を比較することができないことを示します。
例えば、平行線の間には互いに対応する角が存在しないことを示すことができます。
すると、同角を仮定することの矛盾が生まれます。
矛盾が生じたことから、平行線であることを証明できます。

ユークリッドの平行線公準とは


ユークリッドの第5公準である平行線公準は、幾何学の基礎的な原理の一つです。

第5公準:任意の直線に対して、その直線と直交する直線が一意に存在する

直線上の点と直線外の点を通る直線が、その直線と同じ平面上、互いに交わらないことを述べています。
この第5公準を応用させると「平行線での同位角は等しい」が導き出せます。
具体的には、与えられた直線と平面上の点から、その点を通り、前述の与えられた直線と平行な直線を引くことができるということです。
この公準によって、平行な直線は永遠に互いに交わることなく、無限に伸びていくことを論じています。
ユークリッドの平行線公準は、古代ギリシャの数学者であるユークリッドによって『ユークリッド原論』という著書で初めて形式的に定義されました。
この公準は、古代ギリシャ時代から現代の幾何学まで、数学の基礎として広く受け入れられてきたものです。
しかし、近代の数学の発展に伴い、ユークリッドの平行線公準は厳密性や一貫性の観点から問題視されるようになりました。
ユークリッドの平行線公準に異を唱える、非ユークリッド幾何学では、この公準に反対するようなモデルや理論も構築されており、幾何学の多様性を示す一例となっています。
ユークリッドの平行線公準は、幾何学の基本的な概念を定義し、平行線の性質を議論する上で重要な枠組みを提供しています。
この公準によって、直線と平行線の関係性を理解し、幾何学の応用や証明において基礎となる考え方を展開することができるのは確かです。

平行線公準問題が解決された経緯


「平行線公準問題」は、古代ギリシャから数学者たちを悩ませてきた問題です。
数学者ユークリッドは平行線公準を含む公理系を提案しましたが、その証明や解釈には困難がありました。
課題は、平行線公準が他の公理から導かれるのかどうかという点です。
多くの数学者が解決に挑戦しましたが、未解決のまま、長く「平行線公準問題」としてそのままになっていました。
ところが、19世紀になり、ロバチェフスキーとボーヤイという数学者が「曲面上にある図形の性質を検証する」ことによって「平行線公準問題」が解決されました。
具体的には以下の考え方で証明されたのです。
まず、曲面上に「点」「直線」「三角形」などの図形を設定し、設定された図形について
曲面上に「点」や「直線」や「三角形」などの図形を設定します。
次に、ある曲面上の図形について、「第5公準」以外の全ての公理について満たしていることを調べます。
しかし、この曲面上の図形は「第5公準」だけ、満たさない結果になりました。
この結果は数学の基礎付けや公理系の研究に大きな影響を与えました。
平行線公準が独立したものであることが証明されたのです。
これにより、数学はより柔軟で多様な可能性を持つことが明らかになりました。
この解決により、数学の基礎付けや応用範囲が進展し、新たな視点が開かれました。

より分かりやすい公理は何か?


ジョン・プレイフェアという数学者によって18世紀に証明された「プレイフェアの公理」はユークリッドの幾何学公準の第5公準「平行線公準」をわかりやすく理解できる公理として発表されました。

「与えられた直線上にない点を通る直線は、与えられた直線と平行な直線はただ1本存在する」

ベースは「第5公準」ですが、イメージしやすく、すぐ理解できそうです。
ところが、この公理を用いて「平行線の同位角は等しい」を証明しようとすると、はるかに複雑になり、専門家や研究者でも難題になってしまうのです。
ただ、この公理をユークリッド幾何学の公準系に追加することで、平行線の性質をより明確に定義することは多くの人に理解されています。

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まとめ


ユークリッド幾何学の5つの公準の中でも、5公準「平行線公準」について、公準の内容と矛盾について説明しました。
また公準の矛盾から、異論も生じたこと、そして、長年の課題だった「平行線公準問題」を総合的に証明できた経緯や解説をしました。
数学の世界は奥深く、学べば学ぶほど面白い学問であることが分かります。
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この記事の執筆者:個別の会代表 谷本秀樹

医進の会代表 谷本秀樹
講師として希学園や浜学園、四谷学院や医学部受験予備校やプロ家庭教師センターなどで中学受験・高校受験・大学受験の集団授業や個別授業で延べ2000人以上の指導に関わり、圧倒的な成績向上と高い志望校の合格率を誇ってきた。
関西No.1の個別の医学部受験予備校『医進の会』の代表でもあり、これまで600人以上の生徒家庭に関わり、豊富な入試情報と卓越した受験指導で数多く志望校合格に導いてきた、関西屈指のカリスマ代表。